■報復戦争に反対

大江眞輝

2001年9月11日の米国での同時多発テロは多くの犠牲者を出した。
その数字をあげることは容易い。だが、その犠牲は数字には表せないほど多くの悲しみと怒りを生んだ。テロ直後、米国ブッシュ大統領は、“これは戦争行為だ”との声明を出し、各国に支援を呼びかけ、世界は報復戦争への道を突っ走り始めたのである。日本もまた、湾岸戦争の時のようなことがあってはならないとして、参戦法の審議に本格的に取り組み、自衛隊の現地派遣を前提とした支援に向けて進もうとしている。
既に、10月に入って、米国、英国はアフガニスタンに報復攻撃を始めており、多くの民間人が犠牲になっている。テロの首謀者とみられているビンラディン氏はタリバン政権がかくまっていて、所在は明らかになっていない。

この問題について、報復戦争へ世界が突き進むことに反対する理由は幾つかある。

第一に、人道的な理由である。
 戦争がとりわけ民間人に大きな危険を及ぼす政治的手段であるということは、世界的にも認識されていることだ。まして、日本は第二次世界大戦では空襲や原爆など、戦争が一般市民に大きな傷となることを知っている国である。その結果として制定された「日本国憲法」の理念を否定する行為に加担するのは、日本の歴史、世界の歴史に背く行為ではないだろうか。歴史は明日のためにあると著者は信じている。
 毎日、民間の人たちが報復行動の被害に遭っているニュースが絶えない。既に米軍・英軍の今回の攻撃によって、左足を吹き飛ばされた少年の写真は、世界中に配信された。テロとは無関係の子供たちをはじめとした一般市民が犠牲になる攻撃は、一日も早く、一刻も早く停止するべきである。
 戦争は、報復が報復を呼び、憎しみと恨みと悲しみを繰り返すだけである。
 戦争は、その犠牲になるのは子供や女性などである。
 戦争は、世界中にアラブ出身の人に対する差別や虐待、虐殺をさらに生むだろう。
 戦争は、暴力が世界に蔓延させるだろう。
 戦争は、テロを模倣したりする愉快犯が続出し、真のテロ実行犯に対する捜査の妨げになるばかりか、そういった愉快犯によるテロによって、犠牲者が出るだろう。
 戦争は、我々人類の歴史を、明日のためにある歴史を踏みにじる行為である。
 戦争は、悲しみと痛みしか生まない。しかも、直接に戦地とならない場所においても、その悲しみと痛みは生まれる。
 最後に、宗教的な側面もあるけれども、神は戦争を望まれていないはずだ。

 第二に、テロは犯罪として手続きを進めなければならない。
 テロ行為は刑事犯罪である。刑事犯罪は、司法によって裁かれるというのは、近代社会では当然のことであるはずだ。今回のテロはあまりにも規模が大きく、また、米国の経済の中心への攻撃が世界的に大きな打撃となることが示されてしまったということもあるだろうが、冷静に法治国家としての毅然とした対応をするべきではないだろうか。
 戦争行為によって解決を図ろうとするのは、全く、手続き的に誤りである。テロ行為は刑事犯罪として、正当な手続きをもって、ビンラディン氏の引き渡し交渉を行うのがリーガルマインドが前提となる法治国家のプライドではないのだろうか。
 この項目については、エックス君の論文に詳しく解説されているので、参照されたし。
 
 第三にテロリズムの根絶に必要なことは根本的な解決である。
 諸外国の大部分が米国の支援要請に応えているのには、もちろん、世界の超大国米国の存在が現在の世界情勢のバランスをとっているという事実ももちろんあるだろうが、今後、こういったテロ行為が自国で起こったら、という不安もあるだろう。「ここは一つ世界中みんな団結して、テロ集団に泡を吹かせておかないと」という意図。しかし、本当のテロの根絶は、報復という暴力ではなされないのである。
 また、首謀者とされるビンラディン氏が率いる過激派と米国との関係は、複雑な歴史的背景、宗教的な背景もあるが、これらの関係を修復しないことには、問題は決して解決はしないのではないだろうか。報復行動でテロ行為を根絶するというのはできない。テロ行為の本当の意味での根絶は、やはり、根本的な解決の努力をすることにつきるのだ。

【今できること】
 日本では、現在、与党を中心に参戦法が審議されている。今、私たち市民ができることは、報復戦争には反対だ、自衛隊の現地派兵には反対だ、というアピールをすることである。間接的に政治に参加する権利を十分に活かして、そのアピールをし続けることがこれからの日本には大切なことである。
 憲法9条は歴史をふまえた明日への大きな財産でもあると思う。現在の政治の転覆を願うものではなく、私たちは、同じ人間として大切な命を奪うことを正当化するような、そして、多くの悲しみを生む戦争は認めない、人として人が人を殺す可能性のある派兵を認めない、そして、日本人として過ちを通して得た財産である憲法9条を踏みにじらない、ただ、それだけを願い、冷静にこの思いをアピールしようと思う。

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